海外では一般的な採用方法として用いられている「リファラル採用」は、日本でも2015年頃から注目されています。
本記事では、リファラル採用のメリットや注意点など、企業にリファラル採用を導入するために人事が知っておくべきポイントをまとめました。新しい採用方法として、ぜひリファラル採用を活用してみてください。
リファラル採用とは
リファラル採用とは、既存社員や知人の推薦によって採用選考を行う方法です。リファラル(referral)は、英語で「推薦・紹介」という意味があり、求人サイトなどのサービスを利用しないことで個人をよく観察して採用活動を行えるという利点があります。
近年ではSNSとかけ合わせて、効率よくリファラル採用を行う企業が増えました。
リファラル採用が広がる理由
内閣府の調査によると、20~60代までの生産人口はこれから徐々に減少していくと発表されています。その背景として、少子高齢化問題が浮上。このまま何も対策をしないでおくと、労働者の人材確保は今後ますます難しくなるでしょう。
また現代では、国内の約6割の企業がリファラル採用を行っているというデータもあり、「優秀な人材を確保できた」「採用コストが大幅にカットできた」などの成功例を経営者同士で共有できるのも理由の1つです。
縁故採用との違い
似たような採用方法で「縁故採用」がありますが、リファラル採用とは大きく異なります。縁故採用は血縁関係のある親族を企業に入社させる、いわゆるコネを使って採用する方法です。
それに対してリファラル採用は、社員からの紹介者が一般的な採用候補になります。もちろん、企業とのマッチング率が低ければ不採用にもなるので、採用が確定している縁故採用とは大きく異なるのです。
リファラル採用のメリット
ここからは企業にリファラル採用を導入したときに得られるメリットを、5つ紹介します。
採用コストの削減
まず、一般的な採用活動に必要な費用を洗い出してみましょう。
- 求人広告の掲載費
- 人材を紹介してくれた会社(人)への報酬
- 転職イベントなどの参加費・交通費
- 採用を担当する社員たちの人件費
- 採用者の育成費
いざ必要なコストを洗い出してみると、求職者一人採用するだけでも企業にとっては大きな費用をかけていることがわかります。
では、ここにリファラル採用を導入するとどうなるでしょうか。
まず、人材を募集するために必要な上記3つの費用が完全に削減できます。さらに人件費や育成費も、戦略によっては減らすことができるでしょう。
紹介してくれた社員に報酬を渡したとしても、採用活動にかかる必要経費はかなり削減できるのです。
マッチング率と定着率の向上
採用活動をするにあたり、求人広告はマストです。ですが、その求人広告の内容は、企業の魅力を十分に求職者に伝えられているでしょうか? また、求人広告と人材のマッチング率はいかがでしょうか?
求人広告が多くの人の目に触れなければ、どんなに魅力的な企業でもマッチング数は変わりません。求人広告の内容が悪ければ、せっかく経費を使って採用したのに退職されてしまうなんてことにもなりかねません。
リファラル採用なら、「求人広告を出さずにマッチング率と社員定着率の向上」が見込めます。紹介者の知り合いだからこそ、入社後に問題があっても相談しやすい環境をつくれるのです。
転職市場にいない人材に出会える
転職では、「人材派遣会社」「人材紹介会社」「求人掲載サービス」などを経由するのが一般的ですが、登録しても仕事が見つからない求職者が多いことも事実です。
リファラル採用では、紹介者となる既存社員にも責任感が発生するので、優秀な人材を見つける可能性が高まります。似たような分野で働いている可能性も高いので、企業の探しているぴったりの人材に出会えるかもしれません。
社員の意識改革につながる
リファラル採用は、既存社員の意識改革にもつながります。人材募集している旨を話す際、スカウトしたい相手に自社の魅力を語ります。すると既存社員のエンゲージメントが高まるのです。
これを社内全体で行えるようになれば、既存社員1人1人の意識改革につながり、結果的に会社の成績も向上するでしょう。
採用担当者の業務負担を減らせる
採用活動には、書類選考や面接をするための人事社員が必要ですが、何十人・何百人の採用候補者が集まれば、採用担当者の業務負担は大きいでしょう。人材に出会えるまでの時間も長引きます。
そこでリファラル採用を導入すると、以下のような手順がなくなります。
- 説明会などの準備がなくなる
- 書類選考、面接がなくなる
- 複数人の中から企業に適した人材を選択する必要がなくなる
採用プロセスを簡略化できるので、採用担当者の業務負担を減らしながら、人材採用までの時間を短縮できるのです。
リファラル採用を行うときの注意点
リファラル採用はメリットだけではありません。次は、リファラル採用を導入するときの3つの注意点を紹介します。
不採用時のケアをする
さきほど解説した通り、リファラル採用はコネをつかった方法ではありません。そのため、紹介する既存社員がどれだけ優秀でも、紹介された側は不採用となることもあります。
仮に不採用になってしまった場合、企業としては「社員と紹介された人との関係が悪化する可能性があること」を視野に入れる必要があります。リファラル採用を導入する際には、不採用時のケアをする方法も検討しておきましょう。
他の採用方法と同時並行する
リファラル採用を導入するとき、多くの会社が採用方法をこれ1つにしてしまいます。ですが、リファラル採用は社員全員に情報が伝わっても、すぐには人材紹介をされることはありません。
従来の採用方法をなくすのはリスクとなるので、同時並行でリファラル採用を始めましょう。
求める人物像を社員と共有する
リファラル採用には既存社員がどんな人材を募集しているのかということを、しっかりと理解しておく必要があります。採用担当者のみが理解していても、企業に合った人材とは出会えません。
最終的には社員全体に「企業の求める人物像を共有する工程」が必要になるので、リファラル採用には注意が必要です。
注意点を理解してリファラル採用を導入しよう
リファラル採用には時間短縮やコスト削減のメリットが大きいですが、そのぶん社員全体に求める人物像を把握させる工程が増えるデメリットもあります。
リファラル採用に使えるツールを利用する企業も多いですが、社員が数千人いるような大企業ではない限り、お金を払ってツールを利用する必要はありません。
リファラル採用を導入するためには、既存社員を大切にした戦略を立てるのがおすすめです。これまでの採用方法と併用して、上手く採用成功につなげてみてください。